日本に生まれるということ
日本はとてもいい国だ。
ありきたりなところでは、治安がいい、公共交通機関にほとんど遅れがない、街が綺麗、モノが溢れているなど…
これは当たり前ではない。
治安が悪くて、金出せと脅される。平気で電車が14時間遅れる。路上のゴミを拾って生活している人がいる。障がいのある人が物乞いをしている。
全て僕がみたり、体験したりしたものだ。
日本に戻ってくると、この平和な国で生活できる自分は幸せものだと気づく。
日本人の顔で、日本の国籍を持っているだけで褒められる。
日本の企業がこの橋を作ってくれたんだ。(カンボジア)
本土に戻らなかった日本兵のおかげでこの国は独立できたんだよ。(インドネシア)
日本の政治は好きじゃないけど、日本人は好きだよ。(中国、韓国)
日本人は遅刻しないんだよね、なんてすごいんだ。(イギリス)
ほら、インドの首相と安倍さんが握手してるだろ、日本とインドは仲良いんだぜ。(インド)
実際に言われた言葉です。僕は何もしていないのに、名前も知らない日本人のおかげで、僕は高い評価を受けた。
日本のパスポートを持っているだけで、世界中のほとんどの国に行ける。そのうちの多くの国ではビザが要らない。
ビザなしで入国するためには、国と国とがビザなし協定を結ばなければならない。
「日本人なら大丈夫」という認識が世界にはある。
バングラデシュの友達から、「インビテーションレターを送ってくれ」と頼まれたことがある。
僕は「インビテーションレター」を知らなかった。
貧しい国から外国人が日本に来る場合、収入がしっかりしていないと、ビザが発行されないそうだ。
しかし、その「インビテーションレター」があれば、「友人に会う」という目的がはっきりするため、格段にビザが発行されやすくなるそうだ。
豊かな日本では、必要のないものだ。
学生の時、「食べ物を与えたりする支援は意味がない。技術を教えなければ、豊かにならない」と教わった。
確かにそうかもしれない。
でも、その日に食べるモノがなく、働き口もなく、物乞いをするしかない人を見たことあるか。
その日のことしか考えられないほど貧しい人は沢山いる。
その人にとって将来など、知ったこっちゃないのだろう。
きっと、ずっと日本にいたら理解できなかった。
僕は、この「生まれのよさ」に気づいた時、とても恥ずかしくなった。
生まれのよさだけで豊かな暮らしができる、ヨーロッパの中世貴族のように感じたから。
世界史を学んでいた時、そういう「貴族」というモノが心底嫌いだった。
自分がそれになってしまったような気がした。
僕はこの「生まれのよさ」の上にあぐらをかきたくはない。
自分にできることは何か、その答えはまだ出ていないが、数年後には一つ答えを出そうと思う。
とりあえず今は、誰かの考えるきっかけになってくれればいいかな。